カンカンボーリング屋とは異次元の世界、JAMSTEC「ちきゅう」の掘削技術!!!

谷の入口に車止めると、斜面の上の方から音がする「カーン、カーン、カーン」
 コアチューブを叩く音だ。ひっきりになしに叩いてる。「ちいっ、また詰まらせたか」私はため息を付く。斜面を登りながらはるか上の方に仮設されている単管足場を見上げる。「カーン、カーン、カーン」おいおい、そんなに叩いたらコアチューブ凹んじまうぞ。
 
一般の地質調査ボーリング技術は確かに進歩した。ビットの形状や種類は豊富だし、スリーブ、コアリフターの改良も進んでる。一昔まえまでは、熟練のオペレーターでなければコア採取が難しかった断層破砕帯や砂礫層もきれいに採取できるようになってきた。
 それでも世の中には今でも、まともにコアを採取できないボーリング屋がお金をもらって仕事をしている。
 彼らは、自分が掘削している地面の下をうまく想像できないために、機械任せでただ掘っている。亀裂や破砕帯にあたると、コアチューブを詰まらせてそれ以上掘れない状況に陥る。そして地上部にあがって来た、石の詰まってしまったコアチューブをセットハンマーでカンカンたたく。人呼んでカンカンボーリング屋
 地質は複雑で、多様性に富んでいる。完璧なコアをあげようと思ったら、神経を研ぎ澄ましていなければむずかしい。
 優れたオペレーターは、地質の変化に合わせて送水量や給圧、ロッドの回転数を巧みにコントロールしてコアの採取に努める。そんな熟練オペのコアチューブからは、先端のダイヤモンドビットをコアチューブレンチで外し、リフターケースを引っ張るとスッとコアが出てくる。見事なコアだ。
 公共施設や道路、災害防止施設や原子力発電所など重要な施設の建設時には、詳細な地盤調査(地質調査)が行われる。物理探査も進んできているが、やはり試料が直接みれるボーリング調査は欠かせない。地面を掘って取り出した試料を直接見る、触る、匂いを嗅ぐ。なんともアナログな調査手法だが、この方法でしか理解できないのだ、この複雑怪奇な自然を相手にしているかぎり。
 つい最近、地球深部探査船「ちきゅう」を運用するJAMSTECの方の講演を聞く機会があった。

JAMSTECのパンフ
 最先端の物理探査でもなく、宇宙から地球を観測するでもなく、地面を掘るという地味で単純そうに見える探査。しかし、そこに使われている技術はとんでもなく進んでる。
 探査船を固定するのにアンカーは使わず、スラスターと呼ばれる複数のスクリューと高精度なGPSを用いたオートマチックな制御を行っている。ライザーパイプやドリルバイプの継ぎ足しや掘削もジョイスティックみたいなのでやってるようだ。
 海洋底を掘る。そしてサンプルを手にとって見ることができる、しかも数千メートルの深さの試料を。
 この単純明快でアナログっぽい探査で、わかることは意外に重要で根源的な意味を持っているようだ。
 地下の環境は意外に生命の多様性を担保しているし、地下深くにも多くの生命体がいるって話には驚いた。また、人類は未だに地殻を突き抜けてマントルに達したことが無いなんて、これも知らなかったあ。
 JAMSTECの最近の活動
  • 下北八戸沖石炭層生命圏掘削
  • 南海トラフ地震発生帯掘削
  • 沖縄熱水海底下生命圏掘削
  • 東北地方太平洋沖地震調査掘削
 などなど色んな活動を行っている。探査船「ちきゅう」東北地方太平洋沖地震の際には八戸で津波の攻撃を受けたようだ。その後、すぐさま震源断層域で掘削を行っている。なんと、地震を起こした断層を掘削して温度を測り、その摩擦熱を測定して地震のエネルギーを推定するためだってすげ~。
 この講演を聴いてもっとも感心したのは一連の国際プロジェクトを日本がリーダーシップをとって行っていること。
 地球深部探査船「ちきゅう」には世界中の研究者が乗り組んでいるそうだ。船内の公用語は英語。内部はまるで航空母艦のように食事や娯楽、日常生活が送れるようになっている。
 日本は海洋国家だよなあ。最近は中国が海洋国家って行ってるらしいけど、あっちはどう見ても大陸国家でしょう。
 まだまだ、海洋は未知のフロンティア
 メタンハイドレードやシェールガス、地底の生命圏、断層沿いの生命圏などなど、話題にはことかかない。
 これからもJAMSTECの活動に注目していきたい。そういえば、ipadアプリも紹介されてたなあ、ipadもってないから試せないけど。


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