ヴィッツ意外にいいじゃない?

私はスバリストだった。

 
春はあけぼの、秋は夕暮れ、星はすばる。
社会人になって最初にのった車は中古のシビック。ダムの飯場ぐらしだった私は、週末のたびに、高速とばして自分ちに帰ってた。しかし、この中古シビック、高速で80km/h以上だすと車体が震えた。リアウインドウの部品がガタガタ鳴った。ホイルバランスもアライメントもめちゃくちゃだったんだろうなあ。天井に足跡ついてたし、どっかに重ねてあった廃車寸前のクルだったのかも。毎週、ひたすらハンドル握りしめて夜中に何時間も運転してた。
 
福岡-鹿児島間、朝8時の朝礼に間に合うように、午前3時くらいに出発して九州道を南下する。加久藤トンネルがまだ出来てなかったから、人吉で高速おりたら、加久藤峠をこえなきゃならない。一番ショックだったのは、この峠ではトラックに後ろからあおられること。空荷の鮮魚運搬トラック恐るべし。ぜったいフェラーリより馬力あるエンジンつんでるんだろうなあ、登り坂でぶっちぎられて、ループ橋の連続コーナーもタイヤならしてクリアしていく鮮魚運搬トラック。ものすごい馬力。九州でも冬の峠は凍ることがある。加久藤峠でなんどもスピンしそうになった私は、絶対次に買う車は馬力のある4WDにするって決意した。
 4WDといえば当時はパジェロだよねってわけで、友人にパジェロをかりて、長距離走ってみた。うーん、パジェロってようするに2トンダンプをちょっとかっこよくしただけだね。ディーゼルエンジンは馬力あるけど加速はほんとダンプなみ。
 もっと、加速のいい4DWないのかな。ってときにであったのが、スバルのインプレッサ。当時はあまり知られてなくて、友人にはコンプレッサー?って皮肉られた。なんでスバルやねんっても言われた。
 でも、試乗したインプレッサ、外見はカローラやサニーと変わらないのに、高速を運転するとガンガン走った。しかもフルタイム4WD。
 これに決めたってわけで、2台目の車はインプレッサに決まり。それからインプレッサスポーツワゴン、インプレッサWRX STI、レガシーB4とスバルばっかり乗り継いできた。タイヤも頻繁に交換してたなあ。結婚してさすがスポーツタイプの車は維持できないって思ってからはスバルの軽 R2に乗り換えたくらいのスバル大好き人間。

 でもやっぱり、軽はキツかった。

高速で、よくトラックやバスのうしろにくっついてる軽自動車を見て、なんでだろう?追い越せばいいのにって思ってたけど、実際軽自動車にのってみてよくわかった。
 ICから高速のって、順調に加速。軽自動車でも十分100km/hには加速できる。その後、順調に巡航する。軽自動車で十分じゃん。結構静かだし、よく走る。
 ふとみると前方にトラックが。ゆっくりと追いついて、さあ、追い越そうかな。隣の車線に車が来てないかミラーで確認。レガシーに乗ってた時の感覚で方向指示器をだして、ゆっくりアクセルを踏む。そして車線変更。あれ、加速しない。頑張れ、R2。床までアクセル踏み込むとエンジンがものすごい音をあげて唸りだした。ようし、このままトラックおいこすぞー?あれ、エンジンは唸って回転数も上がってる。でも車体はちっとも前に出ない。あれれ?と思っているうちに、後方ず~っと後ろにいたカローラがうしろに迫ってる。このままじゃ、カローラにブレーキ踏ませることに鳴っちゃうなあ。でも、どうしようもない、元の車線に戻るにはブレーキ踏んでトラックの後ろに戻るしか無いけど・・・それもトラックの横に並んだ状態では難しい。ひたすらアクセルを床まで踏むけどいっこうに加速する気配はない。ただエンジンが唸るだけ。そのとき初めて知った。軽自動車って、100km/hでも120km/hでも走れるけど、100km/hからさらにダッシュ加速しようと思うとまったく反応しないってことを。結局うしろのカローラにパッシングされながら、ようやくトラックを追い越してもとの車線に戻ることが出来た。
 レガシーB4がなつかしい。よく考えたら、軽自動車のこのボディ、このタイヤ、このブレーキで100km/h走行してる事自体が、かなりリスキーだよね。
がっしりボディ、ビルシュタインダンパー、4potキャリパーブレーキのレガシーでガンガンブレーキ踏んでもスピンすることは無いだろうけど、フニャフニャサスペンションでリアはドラムブレーキのR2で、高速運転中に、急ブレーキ踏んだらスピンしそう。

 やっぱり、普通車がいいって理由で、小型車を買うことにした。

そんなこんなで、去年、小型車を買うことを計画。
 小型車といえば、ホンダのフィット、日産のノート、三菱のミラージュ、マツダのデミオ、トヨタのヴィッツあたりが候補。
うんでもって、ディーラー巡りをすることにした。
 不祥事だらけの三菱車はまず除外。マツダのデミオもちょっと室内空間が狭そうだからカタログの段階でボツ。
 ホンダと日産、トヨタのディーラーに行くことにした。

まず、ホンダ。フィット

 営業は若い兄ちゃん。サラサラと車の解説が進んで、さあ、試乗しましょうってことに。フィットは軽快な加速を示した。なかなかいいね。燃費もいいみたいだし。内装もホンダっぽくて特に不満は無い。

つぎに日産。ノート

 営業は、青いつなぎを着たおっさん。カタログならべて色々解説。エコスーパーチャージャーを偉く薦めてくる。とりあえず、試乗。うーん、ドア内側がのレバーがなんだかプラモデルみたい。ドアの開け閉め音もなんだかスカスカな感じ。印象悪すぎで、ボツ。室内空間は広いけど、フィットに比べたら全てにおいてだめって感じ。

一応、トヨタにも行っとくか。ヴィッツ

 正直、トヨタ車には興味がなかった。黙ってても売れるから営業も値引きしないってはなしもあったし。でも一応行っとくかって気持ちでトヨタディーラーへ。
 営業はホンダと同じくらいの若い兄ちゃん。
さて、試乗するか。ドアを開けて乗り込む。あれ?ドアを閉めるときの音がいい。ドシッという感じ。ノートの軽い感じとは雲泥の差だな。加速、いい。ハンドルを切った時の切り味、いい。室内静か。アクセルから足を外した時のエンジンブレーキの効き方、タイミングすごい。しかも、フィット、ノート、ヴィッツのなかで一番値引き率が良かった。固定概念って恐ろしい。トヨタのヴィッツなかなかいいじゃん。って理由で結局購入へ。

唯一の不満は、横滑り防止装置を売る気がないってこと。

ハイブリットを買う経済的余裕はないけど、燃費はそこそこいいから、普通エンジンで十分。アイドリングストップはなんちゃって装備だろうから、全く興味が無い。カタログ上の燃費競争はほとんど意味ないからね。燃費性能だけ見て車買う傾向にある消費者もあれだけど、カタログ上の燃費数字を良くするために、無駄な機能とりあえずつけてしまうメーカーもあれだなあ。
 でも横滑り防止装置は絶対欲しかった。なんどもスピンしそうになった経験から、安全装置としての横滑り防止装置はABS同様標準装備にして欲しいくらいだ。

ところが、横滑り防止装置をつけようとすると、アイドリングストップも付けなきゃならない。

なんで?そんな売り方するの?そういうセットでしかチョイスできない。アイドリングストップなんて要らない。でも横滑り防止装置は欲しい。そんなユーザーの要望に答える気は無いらしい。ようするに売る気がないんだろうな。安全装置は二の次ってことでしょ。

あれから、半年。

フィットには会社の業務で、ほぼ毎日のってる。自分のヴィッツには週末乗るって生活。じわじわとヴィッツにしてよかったって思う今日このごろ。試乗ではわからなかったフィットのだめなところが、日々明らかに。
 意外に加速がだめ。ボディーはヴィッツにくらべて軽く作ってあるみたい。それで試乗したときは加速良い感じがしたけど、日々の乗車では、このタイミングで加速ってときに加速してくれない。 エンジンブレーキのタイミングもなんかチグハグ。コクコクってへんな感じでブレーキが効く。高速運転ではなんだかエンジンうるさいし、風に弱い感じでふらつく。ヴィッツのほうがはるかに洗練されてる。

良かった、ヴィッツで。内装は公務員みたいな無味乾燥な感じだけど、なれたら気にならない。それよりも、加速、ブレーキ、室内の静かさ、エンジンブレーキの効き具合、高速道路での安定性どれも合格。さすが、トヨタって感じ。

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