ベッドタイムに、関羽が、張飛が、趙雲が帰ってきた!!

 高千穂町辺りでは、春先に窓の外を眺めると、田んぼの土手にツクシがニョキニョキ。

渓谷を挟んだ対岸の杉林から花粉が飛ぶ季節。杉山の向こうにはギザギザの青い山々、さらに遠くには標高1000m近くある紫色の二ツ岳が見える。小さな頃からこんな環境で育ったから、遠目が効く。視力はず~っと2.0。
遠くに見える二ツ岳

視力がいいのが自慢だったけど、最近遠くしか見えなくなった。ようするに遠視。うーん、老眼とは言いたくないが老眼だな。
 学生のころからずっと、寝るときは本を抱え込んでベットで1〜2時間読書してから寝るのが習慣だった私。いつの頃からか本を読むのが辛くなってきた。だって、結構、本を顔から話さないと読めないんだもの。ピントが合わない。手がだるくなるってことで、しばらく読書から遠ざかっていた。
 本棚を見られるのは恥ずかしいっていうけれど、確かにその人の心の一部を反映しているともいえる。なんども引っ越しを繰り返した私の本棚も昔とは随分ラインナップがかわったなあ。小学生のころは、SF大好きで、スタートレックやキャプテン・フューチャーなんかが沢山あったなあ。中学生になったらミステリー。とくに横溝正史の金田一シリーズはなぜか背表紙が黒いところが気に入って沢山並んでた。高校生になったら、コミックとブルーバックスのオンパレードの本棚だった。なぜ宇宙は存在するのか?とかなんとかそんな本。





大学生になったら、なぜかギリシャ神話っていうかホメロスなんかにハマってしまった。その後、ドストエフスキーやディッケンズ、ヘミングウェイ、スタインベック、サガンなんかがお気に入り。一時そんなんばかりの本棚に。
 社会人になってからは、キワモノっていうか、ビジネス本ばかりのなんだかドライな本棚になっちまった。
 なんだかんだで、人の興味って変わるもので、引越しのたびに本を処分して行ったら、かつての愛読書はどこへ行ったの?ってくらい本棚の風景変わっちまった。

 それでも中学生のころからずーっと変わらず本棚の一角を占めている本たちがいる。

「吉川英治の三国志 全8巻」と「司馬遼太郎の項羽と劉邦 全3巻」だ。
 20代のころは、色々思い悩むことがあると三国志の1巻から8巻までよく読んだなあ。さすがに最近は思い悩むなんて暇もないから、全巻読み通すことなんてなくなったけど、
5年毎くらいにふと読みたくなる。本棚から一摑み。2、3冊掴んでおもむろに読み始める。たいてい4巻か5巻あたりをつかんでる。4巻は主役が曹操から劉備にかわる感じのところかな? 中国の歴史に興味があるわけではないけれど、吉川英治が戦前に書いた文章はすこし言い回しが古臭いところもあるけど、何度読んでも飽きないなあ。
 ファミコン版 ゲーム三国志では、曹操を選んでプレイしてた私。だって、優位にプレイしたいもん。劉備なんかでスタートしたらとんでもない。他国に攻められっぱなし。

なんで三国志にひかれるんだろう? 物語には実にたくさんの登場人物が描かれている。卑怯な奴、裏切り者、姑息な奴、頭のいいやつ、運の良い奴、だまし討する奴、卵を地面にたたきつけるように、自分の命をポンと捨てる奴、主君のために奮闘する男達。策略の道具となる女達。青龍刀や蛇矛ひとつで天下を狙う。

 三国志は男のロマンだ。最近ではロマンなんてバスロマンのCMでくらいしか耳にしないぞ。

何百もの登場人物の中で、個人的に最も好きなのが趙雲子龍。長坂の戦いでの活躍、老いてからも武人として最後まで活躍する姿が憧れだ。
どれでもいいから、本棚から取り出して、数ページ読み進むとワクワクしてくる。血が沸くっていうのはこういうことかな?なんだか元気が出てくる。
老眼鏡をベットに持ち込んで4巻を読んでいる。「三国志」を読むと元気がでる。
では、一方の「項羽と劉邦」はどうか。

劉邦は冴えないおっちゃんだが、天下を取った。

三国志は、元気を出したいときに読む本だ。では項羽と劉邦は、どんな時に読みたくなるか。こいつスゲーっていうような天才的な奴、イケイケのハリキリくんに出会った時。威圧的でこっちになんでも要求してくる嫌なやつにあった時。自信満々、自信過剰でおせっかいにも色々アドバイスしれくる自称成功者の先輩方。こんな人達に会った時、読みたくなるんだなあ。
 

世の中には生まれつきポルシェやフェラーリのエンジン見たいな脳みそ積んで人生を突き進んでる奴がいる。


フィット、ヴィッツクラスのエンジンしか積んでない私はなんだかついていけない。みんながそんなに頑張れるわけじゃないんだよ。ってときに、項羽と劉邦を手にとって、人間一人の能力なんてたいしたことない。ってことを確認する。
 体力、知力、政治力、武力どれをとっても一流の楚王「項羽」。一方、劉邦は酒色を好む下品なオッチャンって感じで描かれている。圧倒的に強い項羽。圧倒的に弱い劉邦。でも最後は劉邦が勝って、漢王朝を築く。項羽が敗れ、敗死するまでの過程がなんともリアルで壮絶。なんで?なんで?項羽が負けるの?あれ、あれ、あれって感じであっさり負ける。しかも最後は四面楚歌になって愛人を切り、自分自身も引き千切られて最後を迎える。右手だけとか鼻だけとかを持ってきたものにも劉邦は褒美を与えて恩賞を明確にしたらしい。

三国志で英雄に憧れながらも、項羽と劉邦で、自分は凡人だなあと再確認する。

劉邦の臣下には有能な人が集まってくる。項羽は自分自身が有能だから他人を信じられないのだろうな。
そんなこんなで、最近三国志の4巻をベットで読んでいる。なにか悩み事があるわけではない。嫌なことがあったわけでもない。
老眼鏡に慣れてきて、また読書の楽しみを思い出した感じだ。

人間の細胞は数年で全て入れ替わるって言うけど、同じ本を10代、20代、30代と何度も読んできて、読むたびになにか生きるヒントを得てきた。毎回新しい発見がある。
さて、今回はどんな発見があるのかな。老眼鏡にさらになれたら、また、ホメロスでも読んでみるかな? 拡大表示できるkindle版がでたらそっちが老眼にはいいかもね。







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