平戸でいやされた。かつての国際貿易港。

 保守主義ってなんだかネガティブなイメージがあった。

なんか新しいものを否定するような。まあ、昨今の混沌とした現代社会においてはなになに主義ってのもほとんど意味ないカテゴリーかな? ただ、最近ふとした瞬間、山々や星々、海や草原をボーっと見つめてる瞬間なんかに、郷愁というか漠然とした温かみというか、そんな思いに取り憑かれることがある。ふるさとの風景は自分の気持ちをなんだか保守的な気分にみちびく。

 露天風呂に入って、夜空を見上げる。

 
満点の冬空。オリオンがくっきり。近くの縁石に陣取っていた親子の会話が聞こえてくる。『パパ、すばるってどれ?』、『ばか、スバルは肉眼では見えないの』、『ふーんそうなんだ』。おいおい、都会の人は”すばる”は肉眼で見えないのか?清少納言もびっくりの発言だ。
 時々近くの空港から飛び立った飛行機が星空を横切っていく。山の中腹にある露天風呂。天拝の郷からは、筑紫野市、福岡市の夜景が一望できる。
 私のふるさと宮崎県高千穂町では、夜、30分も夜空を見上げていたら、瞳孔がしだいに開いてきて感度上昇。普段見えない星々が見えてくる。天の川の形もくっきり見えるし、オリオンの三ツ星のしたにボーっとみえるオリオン星雲もくっきりみえる。もちろんスバルの六連星も見えるに決まってる。流れ星も一時間も見上げていれば何個か見えるし、人工衛星も動いていくのが見える。
 最近そんなふるさとの風景や思い出が懐かしく思える。変わらぬ風景。この変わらぬ風景ってのにはネガティブなイメージはない。保守的っていわれることもないだろう。

 今年になって、最初に読んだ本

『歴史から考える日本の危機管理はここが甘い』(上念司)に、保守主義についてこんな記載があった。『保守主義は・・・・人間の理性には極めて懐疑的で「絶対に正しい理論」など信じようとしません。・・・いまの社会の仕組みは歴史上の幾多の議論、反証に耐えて生き残ってきたからにはそれなりに理由があるにちがいない』うーん、保守主義って人間の理性を信じないから、保守的なんだ。ではその反対の考え方は、人間の理性を信じるってこと、それは理性によって導かれた理想的な社会を作れるって信じること、なんだか夢の様ないいことなんじゃないのって思ってしまうけど、これは歴史上沢山の悲劇をもたらしたらしい。まあ、理性的に優れた人(エリート)が管理する社会はすばらしくなるだろうって、任せてみたらとんでもないことになっちゃったって話。旧社会主義国の末路は悲惨だったし、エリートばかりになった大本営は、とんでもない負け戦やっちゃったし。エリートばかりの官僚もろくでもない末路に日本をみちびくんだろうな。
 てなわけで、最近、日本の伝統文化や伝統的な考え方が色濃く残っている里山、漁村、山村の地道な暮らしになんだかあこがれを感じる40代。

 今まで観光では行ったことがなかった長崎県平戸にバスで行ってみた。

宿からの海方面の眺め
 かつての国際貿易港。鎖国になるまではオランダ商館があったり、キリスト教の布教もあったりで栄えた港。その後の鎖国で港としては衰退していったみたいで、観光でもこれといって目玉があるわけではない。それほど期待せずに宿を予約して訪れた平戸。ところがどっこい、これが良かった〜んだなあ。
 平戸にはいくつか観光ホテルがある。それほど選択肢があるわけではない。楽天トラベルの口コミでは、どのホテルも少しだけ名の知れた田舎の宿にありがちな低いサービスとやる気の無さが印象的みたい。
 私の選んだ宿は「旗松亭」。これが大正解。予想に反してホテルのサービスは高レベル。部屋からの眺めもなかなかでした。平戸大橋と平戸城とフランシスコ・ザビエル記念教会のライトアップが一望できる。

ザビエル記念聖堂

平戸城

温泉もいい湯でした。

なんといっても特筆すべきは、旗松亭のなかの「美湾」での夕食。これが最高。40代の疲れた胃にやさしいメニュー。しかもかなりの満足感を得られるボリューム(アワビにヒラメなんかも)、なのに胃もたれなし。
 翌日は、帰りのバスの時間まで平戸の町をぶらぶら。細い路地を歩いたり、寺院と教会の見える風景の写真を撮ったり、まったりとした時間。体が冷えてきたら足湯でこれまたマッタリ。ヌルヌルした泉質で何時間でも浸かってたかった。
 ものすごく頑張ってる観光地ってわけではない、かと言って昔からある観光資源にあぐらをかいてるってわけでもない。必然性があって、昔の町並みが残ってるって感じ。
 平戸の現在の様子はなんだか癒される。歴史を背景としたまちづくり。どんな町にもその町独自の歴史がある。そんな歴史と伝統を守りながら地道に未来を切り開く。そんな未来もあっていいかも。

 優秀な官僚が考えた地域振興計画は多分失敗するだろうな。

 人間はおろかで、どんな優秀な人間に任せても、というか任せっきりにすれば、技術立国やイノベーション、TTPだ自由貿易だってことで、日本のふるさとは荒廃していくんだろうな。人間はおろかで未来は予想できないからこそ保守主義の意味がある。保守的だからって発展を拒否するわけではない。地に足をつけて、歴史や伝統に基いて地味に発展していくのが正道かもね。人間は優秀で、理想社会を作れるって言うひとがいたらご用心。それは破滅への近道。社会主義やナチズム、官僚は間違わないって迷信、優秀な技術者が管理する原発は絶対安全って神話、あやしい宗教、北朝鮮だってこの世の楽園って触れ込みだったんだから。

 
 

コメント